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暮らしのコラム

北欧的暮らしのアイデア

2018年04月13日【特別対談】ユニバーサルデザインの、その先へ。

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横浜市総合リハビリテーションセンターは、医療スタッフと建築士が連携をとりながら住環境にも細かなアドバイスができる、全国でも珍しい公的機関です。西村顕さんは知的障害・発達障害のあるお子さんのための住環境整備にも尽力され、その事例をまとめたガイドブックを出版されています。そんな西村さんに、現場から見たこれからの住まいづくりについて話をうかがいました。

「誰にでも使いやすい」よりそのご家族に合った形を

内藤 今回、西村さんにはたくさんのアドバイスをいただきながら、発達障害のある10代の息子さんがいらっしゃるS様のお宅をリフォームさせていただきました。スウェーデンハウスはもともと福祉の国の建物なので、創業当初からバリアフリー仕様。赤ちゃんからご高齢の方まで、誰もが安全に安心して暮らせるユニバーサルデザインの発想が基本になっています。ただ、それがパーフェクトかというとそうではない。今回のリフォームは、弊社にとって大変意義のあるものになりました。

西村 リハビリテーションセンターには、家のリフォームから自宅でのリハビリについてまで、年間約1000件の相談が来ます。高齢者の方や脳卒中などによる障害、あとはALSなど難病の方の相談が多いのですが、今回のようなお子さんの相談も年々増えているんです。

内藤 特に横浜市は、この分野でとても進んでいますよね。西村さんが本を出されるまでは、マニュアルなどもあまりなかったとか。

西村 高齢者を対象にした住まいづくりのマニュアルというのは、いっぱいあるんですよ。でも、車椅子ではなく、運動機能には問題がない、知的の部分の遅れや発達面で偏りがあるお子さんに関するものはあまりない。そのことで困っているご家族が、実はたくさんいらっしゃるんです。ひとくちに障害と言ってもいろいろありますし、同じ発達障害でも、そのお子さんによって課題や対応は違ってくる。「誰にでも使いやすい」というより、そのお子さんやそのご家族に合った独自の設計が必要となってきます。

内藤 西村さんにいろいろご相談する中で、私たちの感覚からすると新たな発見もたくさんありました。

西村 そうですね。たとえばカーテンなど、破れるまで引っ張って遊んでしまうお子さんのために、こんなアイディアがあります。このカーテンは、吊る部分がマジックテープで留めてある。ある程度力が加わったら取れるようになっているわけですね。引っ張って取れてしまっても、またすぐにつけられます。

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内藤 もとに戻しやすいようにあえて取れやすくするという、通常とはまったく逆の発想ですよね。窓などは開けてしまって落下の危険がないように鍵をつける場合がありますが、いくつもある窓を同じ鍵で開けられるようにする「同一キー」のしくみも便利でした。他にも、触ってほしくないものをしまっておくための鍵にはいろいろなアイディアがありましたね。

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西村 取っ手があると開けてみたくなるので、取っ手はなくしてしまい、磁石で扉を開く仕組みのものなどもあります。これはもともと医療の分野で、劇薬の管理などに使われていた鍵みたいなんですよ。この他にも2つの鍵を組み合わせて、私たちで独自に考えた鍵のしくみもあります。

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認知症に悩むご家族に応用できる住環境整備も

内藤 そうやって住環境を整えていくことで、お子さんの安全を確保しながら、ご家族の困りごとも軽減していけるわけですね。

西村 私自身は発達障害のある子どもの支援では住環境が6割から7割占めているんじゃないかと思っています。しかし、建築職が苦手なのは、そのお子さんがリフォーム後に行動がどう変わり、どう対応した方が良いかという部分です。そこは学校の先生やリハビリテーションセンターの医療スタッフと相談しながら、家族のライフスタイルに合った具体的な提案をしていきます。

内藤 運動機能に問題がないという意味では、私の祖母は晩年認知症で両親がとても苦労していたのですが、今回の考え方にも通じるものがあったように思います。

西村 そうですね。住空間をご家族にとって安全に、シンプルにわかりやすくするという意味では共通しているところがあると思います。たとえば、薬箱を開けて大量に飲んでしまったりしないように鍵をつけて管理したり、トイレを失敗しても掃除しやすくしておいたり、わかりやすい動線を確保して転倒や徘徊を防止したり。認知症の住環境整備もまだまだこれからで、私たちも今ちょうど取り組んでいるところです。

内藤 体にやさしいという点では、スウェーデンハウスは建物自体に「温度のバリアフリー」とも言える性能があります。居室間に温度差がないので、心疾患などの持病のある方にも選ばれています。

西村 それはいいですね。温度差というのは体にとって負担になりますし、発達障害のお子さんには感覚過敏があることが多いので、家の中にはできるだけ余計な刺激がないほうがいい。そういった意味では、スウェーデンハウスは木を基調としているのも落ち着けるのではないでしょうか。コンクリート打ちっぱなしの家などでは音も反響してしまい、それがお子さんには強い刺激になってしまうこともあるんですよ。

危険を回避するためにはしっかりとした強度も必要

内藤 今回は階段の転落防止や、不用意にキッチンに入って危なくないようにということで、格子状の扉を設置しました。風通しも確保しながら、お互いの姿が見えるというのも安心できていいですよね。内装に合わせてパイン材で作ったので、節のあるなしなどの違いはありますが、全体的に統一感が出ました。

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西村 お子さんが小さい頃はベビーゲートで対応されている方も多いのですが、多くのベビーゲートは対象年齢が2歳まで。お子さんが大きくなるにつれて、強度の面で対応できなくなってきます。そうしたときにはリフォームでしっかりとしたものを取り付けることをすすめています。

内藤 危険を回避するという意味では、お家の猫がレバー型のドアノブを開けてしまうようになったということで、鍵をつけられたオーナー様もいらっしゃいます。今回の格子戸は、そういった方にも活用していただけそうですね。

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西村 そうですね。猫つながりの事案では、以前ご相談があった方でお子さんが誤ってキャットフードを食べてしまわないようにと、格子戸に猫だけ通れる小さな出入り口を付けたこともありますよ。でも、今回驚いたのはスウェーデンハウスリフォームさんが非常に細かなところまで対応できたことです。こうしたものは特注が多いので、これまでの事例でもハウスメーカーさんには断られることがよくありました。

内藤 グループ会社の弊社には、スウェーデンハウスで培ったノウハウがあるので、そのご家族に合わせた設計は得意分野です。

西村 細かなことですが、扉の上の天井の中にしっかり補強を入れるなど、見えないところまでちゃんとやっていただいたのが非常に良かったです。

内藤 扉は勢いよく閉まらないソフトクローズのものにしましたが、「この扉にはこっちのパーツのほうが相性がいい」なんてことも、現場レベルでいろいろ調整していました。

西村 Sさんは住宅への意識も高い方だったので、リフォームを機にアクセントクロスを取り入れたりしたのも良かったですね。テレビを収納しておく扉の上を曇りガラス風にするとか、本当にちょっとしたことまでていねいに施工されていました。

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内藤 今回の場合は市の助成金をきちんと受けられるようにするのもポイントでしたが、S様とご相談しながら「ここはどうしてもテイストを合わせたい」という助成金の対象外の部分にはS様ご自身のご希望に沿った形で施工しました。

西村 そうしたバランスをとるのも、とても大切なことだと思います。

わかりやすいルールによって軽減できるストレス

内藤 西村さんは書籍にもまとめられていますが、他にはどんな事例があるのでしょうか。

西村 マンションの場合は、お子さんがフローリングの上で走り回ったり、飛び跳ねたりして、下階の方から苦情がこないか心配というご相談がよくあります。 その場合は、お子さんの行動の理由やきっかけなどを丁寧にヒアリングします。 マンションの場合、子どもが走り回ったり、飛び跳ねたりする音をリフォームで遮音することは大変困難です。ジョイントマットなどを敷いてもほとんど効果はありません。そのため、なるべく早朝や深夜は静かに過ごせるようなプログラムの提案や、走り回ったり飛び跳ねてもよい場所をつくるなどの工夫をしながら、少しずつ変えていくことを考えます。もちろん、ご家族だけでは考えられないこともあるので、学校の先生や医療スタッフなどと一緒に考えます。一方、ご家族の希望により防音ルーム(2重床、2重天井、2重壁等)をつくったこともありますが、どの程度まで遮音ができたかは不明です。音の聞こえ方は個人差がありますので、小さな音でもうるさいと感じる方もいます。近隣との良好な関係をつくっておくこともとても大切です。

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内藤 スウェーデンハウスの場合、窓ガラスが三層なので家の外に音がもれにくいという特徴があります。S様も音が出るのを気にされていたので、この遮音効果の高さがスウェーデンハウスを選ばれる決め手になったそうです。スウェーデンハウスリフォームでは、一般の住宅にも遮音効果や気密・断熱性能の高い木製サッシの三層ガラス窓をつけることができます。

西村 それは良いですね。私たちのところへくる住宅のご相談は、多くがリフォームの案件になります。発達障害のお子さんからの相談は、3歳や4歳くらいから受けることもありますので、お子さんの成長や発達の過程とともに、住環境を見直す必要が出てくることも少なくないんです。

内藤 洗面所やお風呂などで際限なく水遊びをしてしまう場合には、水栓を交換するなど対策をされるそうですね。

西村 はい。蛇口を開けたまま際限なく水を出して遊ぶと、水道代が高額になる場合があります。お子さんにとっては楽しい遊びになっていると思いますが、床が水浸しになったりすると、掃除の手間が増えたり、家事が手に付かなかったりと、やはり家族のストレスは溜まってしまいます。なるべくお子さんの興味や関心がある行動は残しながら、生活に支障が出ない方法を探っていく必要があります。そこがとても難しいところだと思います。家庭の中でルールを決めるきっかけをつくるために、水栓の管理を親しかできないようにするリモコンや一定時間水が出たら自動的に止まる水栓に変更したりすることがあります。お子さんの発達の段階に合わせてルールをわかりやすくすることが大切だと思います。

内藤 わかりやすさは、シンプルさにもつながっていますよね。スウェーデンハウス自体が、もともと「シンプルに暮らす心地よさ」を追求しているところがありますけれど。

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西村 お子さんにとって刺激となるような余計なものは見せない、危ないものは隠すというのが基本的な考え方だと思います。発達障害のあるお子さんの中には、たくさんの情報を処理できないことがあるので、できるだけシンプルな環境がよいですね。

内藤 横浜市にお住まいの方は、西村さんのようなプロに相談できて、とても恵まれていますよね。

西村 スウェーデンハウスリフォームさんも、これからはぜひご相談ください。

内藤 そうですね。これからも、どうぞよろしくお願いいたします!

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西村さんの著書のご紹介

知的障害や発達障害のあるお子さんの行動からくる問題(危険行為や常同行動など)を、防止・軽減するための住まいづくりガイド。ご家族の皆さんが安全に安心して過ごせる住環境整備の工夫とコミュニケーションの方法が、たくさんの事例とともに紹介されています。